unexpected?

場所:アヤト=クリード=メイフィールド=キサラギ名義のマンション リビング
聞き手:桜井 かすみ
語り手:真山 美咲



「へっ?綾人君の意外な所?」

目の前に座る友人が興味津々といった表情で私の顔を覗き込んでいる。
今度は何を企んでいるのだろう・・・。彼女は、何かと言うと彼で遊びたがる。
普段、見られない表情が見られて楽しいらしい。
不審そうな目で見ていた私に彼女が慌てて言い訳を始める。

「あっ、別にそれをネタに如月君で遊ぼうとか今回は思ってないよ?ほら、なんだか彼って完璧って感じじゃない?でも、私が知らないだけで、結構庶民臭いとことかあるんじゃないかと思ってさ。」

私は、じ〜〜っと彼女の目を見る。
本当だ。単なる好奇心のようだ・・・。
まあ、分からないでもないんだけどね。ほんと、彼って違う世界の住人のようだもんね・・。
いや、事実、違う世界の住人だわ・・・。


それはさておき・・・。え〜〜っと、彼の意外な所ねぇ・・・・。
何かあったっけ??



ああ、そうそう。
綾人君ってさ、このマンションみても分かるだろうけど、自分に必要な物以外置かない人なのね。ソファもダイニングテーブルもラグも自分ひとりだから要らないんだって。だから、今も私達、床にクッションひいておしゃべりしてるんだけどね・・・。ごめんね、いつも・・・。
それはされおき・・・。
物で散乱するのが嫌いなのよ。綺麗好きってほどではないんだけど・・・。
で、いつ来ても綺麗にしてるからそれはキチンと整理整頓されてるのかと思いきや・・・、されてないのよ・・・。

びっくりでしょう?
嫌味なくらい綺麗にされてると思うよね?それが、違うのよ・・・。
いい例が、メゾネットにある10畳のお部屋。書庫になってるんだけど、蔵書量が半端じゃないのよ!
色んな国のいろんな本があるんだけどね、一見すると綺麗に並んでるんだけど、よくよく見ると、ジャンルも作者も国もバラバラなのよ!目に付いた場所にいれてるのよ・・・。

うん?読み返したくなったときに困るんじゃないかって?

そう。私もそう思ってね、聞いてみたのよ。そしたら平然と「分かってるから平気。」だって・・・。本当かどうか怪しいから父の本の名前を言って出してもらったんだけど、すぐ出てくるのよ。
嫌よね、記憶力のいい人って・・・。っていうか、そんな所で使わないで、もっと有効な使い方して欲しいものだわ・・・。
あと、寝室の壁一杯のクローゼットも同じような状態なのよ。スリーシーズン分の洋服がぎっしり入ってるのよ!

そうよ、全部ブランド物よ・・。それが、無造作にかけられてるのよ?
私達のその辺で買った服とは違うのよ!!
もちろん、皺が寄ってるのもあるわよ。それはね、着る季節になったら一気にクリーニングにいくのよ・・・。で、その時、彼が着なくなってるのを信裄さんが見つけて持って帰るの。適当に処分してくれてるみたい。
うん、こういう所、坊ちゃんだなって思うよ。

本や服だけじゃないのよね。DVDもCDもMDもそう・・・。しまわれてるだけなのよ・・・。でもね、ピアノのスコアや音楽関係の本やCDなんかは綺麗に揃えられてるのよ?らしいと言えばらしいけれど、何か変よね?
・・・まあね、かすみが言うようにそれだけ思い入れがあるんだろうけどね・・・。なんだか切ないよね・・・。

・・・・・・・・・・・・・・。
しんみりしてる場合じゃないって?はいはい、他ね・・。

あとは、お茶かな?
淹れるのが上手いのよ!基本がヨーロッパの人だからね、淹れ方なんて知らないだろうと思ってたら綺麗に淹れるのよ!!絶妙な温度でね!この前うちに来たときに淹れてくれたんだけど、いつものお茶が高級茶になったわよ・・・。母さんなんか手ほどき受けてたもの・・。でもね、緑茶だけじゃなくて、抹茶や紅茶や中国茶も淹れられるらしいのよ。

・・・・・・そんな、コーヒーを零しそうな勢いで驚かなくても・・・。
そうよね、人が淹れたのを優雅に飲んでそうだもんね。
抹茶と中国茶は淹れてもらってないから分からないけど、紅茶もね彼が淹れた方がおいしいのよ。私も、紅茶葉集めるくらい好きだから自分でも淹れるけど、綾人君には適わないよ。
私、もう自分で淹れない事に決めた。今日、彼が帰ってきたら淹れて貰おうね!私が自分で淹れたくなくなる気持ちが分かるわよ。
ほんと〜〜〜に、おいしいのよ!!
それにね、何と言っても彼の仕草に見とれちゃうのよ。あの長い綺麗な指が茶器を扱う所なんて、卒がなくて自然な流れで、もう目が離せないの。瞬きするのが勿体無いくらいよ・・・。
それが見たくて淹れてもらってるようなもんかなvv

・・・・どうしたの?うな垂れて?・・・えっ!?の・のろけてなんかないわよ!!
す・素直な感想だもん!!
・・・・・・・・きゃ〜〜〜〜〜!!くすぐらないで〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・。
うん・・・次ね・・・次・・・・・。ちょっと、待って・・・・・・。

意外なのかな?彼ね、ピアノ以外に声楽とヴァイオリンを習ってたのよ。
ご両親がご両親だから、当然といえば当然なんだけどね・・・。
・・・・うん、歌はね、偶然聴いたことがあるの。それは、綺麗な声だったわよ!!
うまいなんてもんじゃないわよ!!本人は「ヘタだ。ヘタだ。」って否定するけど、そんな事ないって!!
プロとまでは言わないけど、それに近いものがあるって!!!
・・・・それがね、何度頼んでも歌ってくれないのよ・・・。ヴァイオリンもそう・・・。
「ヘタだから絶対ダメ!!」って聴かせてくれないのよ・・・。ケチよね・・・。
うん、ヴァイオリンあるよ。お父さんの形見のやつが。

かすみ?何企んでるの?・・・・首を振って否定してもダメよ。貴方のその目つきは何か思いついた時の目だもん。・・・やめてね、彼をこの事で遊ぶのは。後が大変なのよ・・・。
・・・・本当に?本当に企んでないのね?・・・まぁ、いいわ。今日は信じてあげる。


あとは・・・・・・。これは、意外というか、やめて欲しい事っていうか・・・。
彼ね、職業と役職の割りに健康管理に無頓着なのよ。

そう!貴方のいうとおりよ!一番、気をつけなければいけない人なのよ!!
なのに・・・はぁ〜〜〜〜・・・・・。

え!?例えば!?
う〜〜〜ん・・・そうね・・・・。

髪の毛!
洗ったままなのよ!かる〜〜く拭いただけで、ドライヤーもかけないで、肩にタオル乗っけただけでウロウロするのよ!
私が注意したら、

「え〜〜〜。ドライヤーの温風って気持ち悪くて嫌いなんだよ・・・。」

って、子供みたいな事言うのよ!!
私がこのマンションに泊まるようになるまで、ドライヤー無かったし・・・。
それはさておき・・・。でも、だからって、そのままにしてたら風邪ひくわよ!!
喉弱いくせに・・・。
だから、私が居る時は私がタオルで頭を水気が無くなるまで拭いて、軽くドライヤーをかけて上げるのよ。水気がないからほんの少し我慢してればいいのに、それさえ、逃げ様とするのよ?信じられる?
あのおっきな体を抑えるの大変なんだから・・・・。

うん?・・・そうね、おっきな子供ね・・・。

子供・・・・、そういえば、私に髪の毛を拭いてもらってる綾人君って子供みたいで可愛いのよ〜〜。大人しく、じっと座っててね、目なんかとじちゃって。
そこら辺の犯罪者とか軽く蹴散らして、政財界のお偉方さんが頭を下げる、あの綾人君が私のされるがままなのよ〜〜。
不思議っていうのもあるけど、それ以上になんとも言えないくらい可愛いの!!
本当に、子供よ!子供!!

なんか、そう考えると苦じゃなくなってきたわ。楽しみが増えたぁ〜〜〜〜。


って、なに床につっぷしてるの?
え?胸焼けがする???
何もたべてないじゃない・・・・。

はぁ?質問をする相手を間違えた???

・・・・なによ、それ・・・・・・。




『unexpected?』 END
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