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君が好き |
『は〜、幼馴染ってタイミング、・・・・難しい・・・・。』
とある晴れた日、別の場所に居る彼と彼女。
目の前に居る友人に向かって、ほぼ同時に呟いた。
〜side she
いつからだろう、彼の背が私より高くなったのは・・・。
いつからだろう、彼の顔が幼い丸みのある顔から角ばった顔になったのは。
いつからだろう、彼の手が節々がはっきりした硬く大きくなったのは。
いつからだろう、彼の背中が広くなったのは。
いつからだろう、彼の香りが男性特有のものになったのは。
いつからだろう、彼を「男」として見るようになったのは。
〜side he
いつからだろう、彼女が自分より小さくなったのは・・・。
いつからだろう、彼女の胸が膨らみだしたのは。
いつからだろう、彼女の雰囲気が柔らかく、暖かなものになったのは。
いつからだろう、彼女の手をすっかり隠せるほど自分の手が大きくなったのは。
いつからだろう、彼女の香りが女性特有のものになったのは。
いつからだろう、彼女を「女」として見るようになったのは。
「は〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
彼は何度目かのため息をついたあと、
「そうだ、今度あいつが見たがってた映画に誘おう!・・・そして、
今度こそ・・・。」
彼は、握りこぶしを作り、気合十分な面持ちで、目の前の友人を無視して
自分の世界に入っていった。
「ま〜〜〜、頑張れや・・・・・。」
毎度のことなのであろう、無視されている友人は、さめた顔で片手を
ヒラヒラさせながら激励(?)した。
そして、数日後。
彼と彼女は、今話題のラブサスペンス物の映画を見、ウィンドウ
ショッピングをし、ちょっと早めの夕食をとった。
その光景は、周りにいるカップルと変わらないのだが、心の繋がりは
違った・・・。
何度かチャンスはあった。「今日こそは!!」と決心してきた。
でも、その度にある不安が、心を支配する。
『この一言で、微妙だけど、温かな今の関係を
壊してしまうのではないか・・・。』
そして今日も何事もなく終わる・・・・。
彼は、自分の家から2軒先にある彼女の家まで彼女を送る。
「今日、楽しかったねvvまた、何処か行こうねvv」
と、彼女は幸せいっぱいの笑顔(彼にとっては天使の微笑)で彼に
そう言うと扉の中に消えていった。
彼はしばらくその場を動けなかった・・・。
それから数時間後、彼と彼女は自分の部屋で、窓から見える星空を
眺めていた。
彼は窓辺に立って、彼女はベットの上から・・・。
「あ〜〜〜あ、今日もダメだった・・・。」と彼。
「は〜〜〜、あれだけ決心したのに・・・。」と彼女。
「俺って、情けないよな〜〜〜」
彼は、窓ガラスに額をコツンと当てて呟いた。
「私の意気地なし・・・。」
彼女は、膝を抱えながら呟いた。
たった一言。その一言が言い出せない二人・・・。
『は〜〜〜〜〜〜〜〜〜』
二人は、ほぼ同時にため息をついた。
そして・・・・
『君が好き・・・・・。』
おしまい。 |
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『君が好き』 END
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