Way of difference partT Last Scene
人工浮島がテロにより爆破されてから2週間がたっていた。ニュースや
ワイドショーも時間は短くなったといえど、未だにこの事件をトップで扱う。
政府は、テロには屈しないとして、新たに同じ場所に人工浮島を作り、
当初の計画通り巨大娯楽施設を建設すると表明した。
ニュースは必ず最後にこう言う。
「本当に、現場が臨時に休みで犠牲者がでなかった事が不幸中の幸いでした」
・・・と。
世間への発表は完全に真実を隠蔽していた。
実際は、テロでもなければ、2人の行方不明者が出ている。
美咲はこの事に昔の父の言葉を思い出していた。
「メディアを使って伝わってくる事がすべて真実とは限らない。見極める目が
必要だよ。」
今回、身に染みてその事がわかった。でも、知らない方が幸せな事もあるかも
しれないとも感じた。

美咲は久しぶりにかすみのマンションに泊まりに来ていた。
夕飯は、かすみの手料理だ。彼女は大雑把な性格に似合わず料理が得意
だった。
美咲はどうも苦手で、手早く作り上げる彼女の腕前にいつも脱帽する。
「ごちそうさまでした。」
そういって、美咲は両手を合わせる。
「お粗末さまでした。はい、お茶どうぞ。」
かすみは、向かいに座る美咲の前に湯のみを置く。
「ありがとう。」
美咲は、数回息を吹きかけてからお茶を一口啜ると、両手で抱えたままテーブル
に置く。
一つため息をついたあと、
「かすみ・・・、私、生理が始まっちゃった・・・。」
と悲しそうな顔で呟く。
「う・うん・・・。」
確かに女性にとって生理というのは煩わしいものである。酷ければ、貧血を
起こし病院のお世話になる。しかし、そんなに悲しくなる事ではない様にかすみ
には思われた。
無ければ無いで困るものだし。
「大変だわね・・・。」
かすみの言葉に美咲が首を振る。
「違うの・・・違うの・・・。赤ちゃん、出来てなかったのよ・・・。」
美咲が泣くのを我慢するように顔をしかめる。
(ああ・・・・・・。)
かすみは、友人が言わんとする事が分かった。彼女は美咲の隣に座りなおし、
黙って友人の顔を胸に抱く。
美咲が堰を切ったように話し出す。
「何もないの・・。彼に愛された証拠が何もないの・・・。印も消えちゃったし・・・・。
残されたのは、小さなピアスだけ・・・・。」
かすみは淡々と話す美咲の頭を撫でる。
「ちゃんとした形で欲しかったの。・・・証が欲しかったの・・・・。」
「うん、そうだね。・・・ねぇ、美咲知ってる?ラピスラズリって西洋では、
9月の誕生石なんだよ。」
美咲は友人の胸の中からゆっくりと顔を上げる。
「彼の好きな石なんでしょう?なんだかさ、美咲の事を好きって言ってるみたい
だよね。」
かすみが優しく微笑む。
「美咲。此処には私しかいない。我慢しなくていいから、泣きな。思いっきりね。」
この言葉に美咲は、友人にすがり、声を上げ思いっきり泣き出した。
2週間、家族に心配かけたくなくて、ずっと我慢してきた涙を惜しげもなく
流しだす。
かすみは、美咲が泣き止むまで頭を撫で続けた。

数日後、美咲は右耳にピアスホールを開け、その穴に小さな青い石をはめる。


Way of difference partT END
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