be there... Scene7
美咲は、壁に掛けたバーバリーのワンピースを穴が開くほど見つめていた。
(何かお返ししなきゃ・・・・。でも、なにを・・・・。)
一年付き合っている彼氏がいるので、男性にプレゼントするのは初めてではないが、金銭的に恵まれている綾人が相手では悩む。
(服とか小物とかは、私達より良いの持ってるし、男性にアクセサリーはね・・・・。香水なんて分かんないし、彼だったら自分に合ったの持ってそうだし・・・・。あ〜〜〜〜、どうしよう・・・・。)
かすみに相談してもきっと
「何でお返しなんてしなきゃいけないの?」
と言うに決まっているので相談できない。
(誠くんの時はこんなに悩まなかったのに・・・。)
クリスマスは、無難に黒のセーターを贈った。バレンタインは、手作りチョコの他に彼が買い換えようと言っていたパスケースを贈った。どちらも、彼は小躍りして喜んだ。特に、手作りチョコは飛び回ってはしゃぎまわった。
(あの時は、周りの人に注目を浴びて恥ずかしかったな〜。)
思い出し、笑ってしまう。
 
誠は、感情を態度で現す、明るい性格だった。
話し好きで、よく冗談も言う。彼といると始終笑っていた。
笑顔も真夏の太陽を思わせるくらい明るい。
サッカーが好きで、サッカーの話をすると止まらないのがたまに傷。
本人もサッカー部で活躍している。
一方、綾人は、どちらかというと無口で静かな性格だった。
大声で話したり、笑ったりしているところは見たことがない。大笑いしているのは、あの時初めて見た。
帰宅部で、学校も時々休む。
優しい微笑みは、誠とは正反対の月を思わせる。
 
美咲は、研究所で見た綾人のオッドアイの瞳が忘れられない。
その瞳で微笑む姿が頭から離れない。
 
(ダメよダメ!!私には、誠くんが居るでしょう!!・・・それに、彼とは住む世界が違うわ・・・。)
 
美咲の思う「住む世界の違い」とは、裕福かどうかであるが、「当たらずとも遠からず」で、実際、この二人は別の意味で全く違う世界に身を置いている。
 
(そういえば、如月君から一度、タバコのにおいがしたわね。意外だったな。)
 
彼女の顔は自然にほころんだ。
 
 
そして、運命の日がやって来る。
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