美咲がゆっくりと目を開ける。
「あっ・・、起きた?」
綾人の声がする。
美咲は、声のするほうに顔を向ける。自分の傍らで綾人がベットの端に座って
自分を見つめている。
ぼんやりとした視界が徐々に鮮明になってきた時、彼女の目に、自分の左手が
彼の白いシャツの裾をしっかりと握っているのが飛び込んできた。
「!!」
美咲は左手をシャツから離し、上半身を勢い良く起き上がらせたが、
起き抜けにその行動は体に負担だったらしく、軽く眩暈を起こし、
前のめりに倒れそうになる。
それを、綾人の左腕が抱きとめる。
「大丈夫か?」
美咲は、軽く頷き、綾人の腕から離れ、顔を上げる。
「私、もしかして、ずっと握ってた?」
「ああ。ずっと。アーマードスーツから着替える時、困ったよ・・・。」
その時の事を思い出して、綾人がクスクスと笑い出す。
血生臭いまま居るわけには行かなかったので、なんとか美咲の手をスーツから
離したが、その瞬間、今にも泣き出しそうな顔になる。「大丈夫。すぐ戻るから。」
と子供をあやす様に囁くと、安心して眠る。
着替え終わって、側に来ると、待ち構えていたかの様に、彼女の手がシャツを
握った。
その話を聞いて、美咲の頬が赤く染まる。
「ごめん・・・。ところで、ここ何処?」
「俺のマンション。」
「えっ!?」
美咲の目が丸くなる。
「だって、美咲がずっと握って離してくれないから、そのまま連れて帰ってきた。」
綾人が事もなげに答える。
美咲は顔が熱くなってきた。顔が赤くなっている事が自分でも分かる。
「ごめんなさい・・・・。」
「別にいいよ。美咲のかわいい寝顔が見れたから。」
そう言って、綾人は美咲の鼻の頭に軽くキスをする。更に彼女は赤くなる。
「さて。美咲はあれからずっと寝てたから、おなか空いただろう?何か買って
くるよ。」
綾人が食べ物を買いに行こうとし、ベットから立ち上がろうとした瞬間、
後ろから美咲に抱きとめられる。
「何処にも行かないで!側に居て!!」
美咲は、綾人の背に顔を埋めたまま懇願する。
彼女は、綾人が自分から離れる事が恐怖だった。
綾人は、自分の腹部に回された小さな手に自分の手を添える。
「わかった。ここにいるから、手を離してくれないか?」
綾人の要求に、美咲が手をゆるめ、彼から離れる。
綾人が振り向くと、美咲が眉を八の字にし、今にも泣きそうな目で自分を
見上げていた。たまらず彼女を抱きしめる。
彼女の不安が痛い程分かる。彼女は自分が離れてしまう事を恐れている。
その不安は、たった一言「何処にも行かない。側に居る。」と約束すれば
解消されるのも分かっている。しかし、彼には嘘でもその約束は出来なった。
でも、このまま不安にさせておく事もできない。
綾人は、一生告げる事はないと思っていた言葉を美咲に告げる。
「美咲・・・・、愛してる・・・。」
耳元で優しく告げられた想いに、一瞬、美咲の目が不安から驚きに変わるが、
すぐに幸せの色になる。
美咲は、そっと綾人の背に自分の腕を回す。
「私も。・・・綾人君を愛しているわ。」
密着していた二人に少しばかり空間が出来る。
美咲が目を閉じ上を向く。
綾人の唇が彼女の唇にふれ、微かに開いているそれに自分の舌を侵入させる。
美咲の舌がそれを受け止める。
二人は、角度を変えながら何度も何度も自分達の舌を絡め合わせる。
「はぁ・・・ん・・・。」
お互いの唇が離れる時、美咲から甘い吐息が漏れる。
美咲の意識は半分朦朧としていた。
綾人は、美咲を静かにベットの上に寝かせ、サイドテーブルの上に置いてある
リモコンで部屋の照明を落とす。
白熱灯で白く明るかった寝室が、常夜灯のぼんやりとしたオレンジ色の暖かな
色に染まる。
綾人は自分の上着を手早く脱ぐとベットの下に投げ捨てる。
(すごい・・・・。)
目の前に現れた、鍛え上げられた肉体に、美咲は目を奪われる。
綾人の顔が美咲の顔に近づいてくる。彼は、美咲の額・両目・鼻・口と軽く
口付けてから彼女の左の耳たぶを軽く噛む。
「ひゃ!!」
美咲の体が軽く跳ねる。
綾人はそのまま首筋に舌を這わせる。美咲の背筋を甘美な感覚がゾクゾクッと
駆け上る。
「はぁぁん・・。」
自分の発した声に驚いて、美咲は自分の口を右手で押さえる。その時、
とある事を思い出す。
綾人は、美咲の顎の下、反対側の首筋を攻めながら、片手で美咲の上着の
留め具を外し、上着の中央を走るジッパーに手を掛け、下に引き下げようと
していた。その時、
「あ・あのね!!」
その場の雰囲気に似合わない大声を美咲が発した。
綾人は、彼女の首元から顔あげ、美咲を見る。彼女は、恥ずかしそうな顔をして
綾人を見つめている。
「あのね・・・。私・・・はじめてなの・・・・。」
美咲の告白に綾人が驚いて目を見開く。
それもそのはず、綾人が高校を中退してからも、誠と美咲は付き合っていた
のだから、普通はとっくに経験しているものだと思うだろう。
(芝山は、よく耐えたな・・・。)
と心の中で感心しながら、美咲に小さく微笑むと、自分の額を美咲の額に
軽く付ける。
「美咲は、俺の事、怖い?」
「怖くないよ・・。」
「じゃあ、大丈夫だよ。」
そう言って、綾人は美咲の唇に軽く口付ける。そして、そのまま首筋に顔を
降ろし、今度は強く吸い上げる。
「くう・・・・ん・・・。」
無意識に美咲の口から吐息が漏れる。
綾人が口を離すと、赤く彼の刻印が記されていた。
綾人は今度は、一気にジッパーを引き降ろす。美咲の上着の前がはだけ、
彼女の白い肌と、ブラに包まれた胸が露わになる。
綾人は、美咲の背に左腕を回しいれ、彼女の体を浮かせる。そして、右手でブラ
のホックをはずす。美咲は、自分の胸に軽い開放感を感じた。
そのまま彼は、器用に両腕から上着とブラを抜き取ると、ベットの下へ
放り投げる。
(恥ずかしいよ・・・・。)
美咲は顔を背け、目に力を入れて閉じる。
初めての彼女は、いくら好きな男性とは言え、何も纏わない体を晒すのは、
耐え難い程恥ずかしい。
そんなことを綾人は知ってか、知らずか、彼女の左胸の頂を口に含み吸い付く。
左の手で右胸の頂を優しく撫でながら・・・。
「はぁ・・・・・ふぅん・・・・・くぅうん・・・・・・。」
美咲は、綾人の愛撫に何も考えられなくなっていった。彼が掘り起こす甘美な
刺激に身も心も支配されていく。襲い来る刺激に声をあげ、身を捩る。
散々胸を刺激し続けた綾人の口は、胸を解放すると、左手はそのまま胸に残し、
徐々に彼女の下腹部に向けて降りていく。
赤い己の刻印を残しながら・・・・。
美咲のわき腹に刻印を残したあと、綾人は顔と手を美咲の体から離し、
彼女のスカートのジッパーを降ろす。
「美咲、腰浮かして。」
綾人にそう言われて、ぼーとしたまま美咲は腰を浮かす。
次の瞬間、一気に綾人がスカートとショーツを剥ぎ取り、投げ捨てる。
そして、自分もジーンズと下着を脱ぎ捨てる。
今、二人は一糸纏わぬ姿で向き合っている。
「・・・やだ・・・・・・。」
全裸になったことで、美咲は甘美な呪縛から逃れ、再び羞恥心が支配する。
少し開きかけていた両足をきつく閉じる。
綾人はそれを無理に開く事はしなかった。彼女の両方の太もも・膝・ふくらはぎに
軽いキスを次々に落としていく。その優しいキスにより、彼女の羞恥心が薄らぎ
はじめ、足に込められていた力が抜けてくる。
それを見定めた綾人は、美咲の膝を抱え、両脚を大きく開くと、彼女の秘所に
口を付ける。
「あ!やぁ!!だめ!!」
美咲は綾人の頭を掴み、引き剥がそうとするが無駄であった。
「やぁぁ・・・・・。」
綾人の優しく、時には激しい愛撫から逃れる事はできない。
「ふぁあああん・・・・ひっ・・・くふぅん・・・」
胸や体で味わった快感とは違う快感が彼女を支配する。頭の芯が痺れた様な
感じで、何も考えられない。
執拗に彼女を攻めていた綾人が顔を上げ、右腕で口を拭う。
未知なる刺激から解放された美咲は、全身の力が抜け切り、体全体で息を
していた。
目も朦朧としている。
綾人が息も絶え絶えの美咲に額を付ける。
「・・・いいか?美咲・・・。」
彼の確認に、美咲はにっこりと微笑み承諾する。
「ありがとう。」
綾人は、美咲の頬にキスをすると、ゆっくりと腰を沈め、彼女の内部に侵入し
はじめる。
「い・いたっ!!・・ぐっ!!」
美咲はシーツを握り締め、唇を噛み締める。
身体を引き裂かれる痛みだと聞いたことがあったが、それは本当だった。
(痛いよ〜・・・・。もう、やだ・・・・。)
彼女のきつく閉じた瞳から自然に涙がこぼれていた。
「美咲・・、俺の背中に手を回して。爪を立てていいから。我慢しなくていい。」
綾人は美咲の髪を優しく撫でる。
痛みを我慢している美咲はそっと目を開け、綾人が言う通りに彼の背に手を
回す。
「ごめん。」
そう呟くと、綾人は途中で止まっていた侵入を最後まで一気に推し進める。
「やっ!!」
先程以上の強烈な痛みに美咲は、綾人の背に思いっきり爪を立て、
身体を仰け反らせる。
「つぅ・・・。」
綾人が背中の痛みに顔を歪めるが、美咲が経験している痛みに比べれば、
何て事はない。
綾人は、静かに息を吐いた後、ゆっくりと動き出す。
「い・・・いたい・・・・ふぅ・・・・。」
美咲は、彼から突き上げられる度に痛みで顔を歪め、彼の背中に爪を立てて
いたが、彼の動きが増してきた頃には、痛みを凌ぐ快感が彼女を襲い始める。
彼女の上げる声が、痛みを我慢する声から甘い声に変わってきた。
「・・・あっ・・・・ふぅ・・・・ん!!・・・ああ!!」
痛みより甘い感覚が美咲を支配した頃、彼女は何か得体の知れないものに
引きずり込まれる感覚がし始めてきていた。
「いやぁ・・・・なに・・・・・これ・・・・・・・・ふぅんっ!」
綾人の動きが更に激しくなる。
美咲の頭が徐々に白くなり思考を奪っていこうとする。そんな初めての感覚に
彼女は恐怖を覚える。
「やだ・・・。はぁ・・・・・。こ・・こわい・・・・。やぁん・・・。」
「美咲・・・・。怖がらなくて・・・いい・・・。」
綾人は美咲を攻め上げながら、優しく諭す。でも、そんな彼の顔もあまり余裕が
なさそうである。
彼の動きに深みが増し、美咲は僅かに残っていた理性を手放した。
「はぁぁ!!・・・あぁん!・・・もう・・・だめ・・・。ああああああああ!!」
「美咲!・・・・・くっ」
綾人は動きを止め、美咲に覆いかぶさった格好で彼女をしっかりと抱きしめると、
彼女の中に自身を解き放った。
そして、美咲も何かに弾かれた様に仰け反った。
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