Way of difference partU Scene4 〜Misaki side〜
綾人が新宿中央公園で、男女二人から命を狙われた日と同じ日の夕方。
美咲は、レンタルショプのDVDコーナーで、返却されてきたDVDを棚の
ケースに収めていた。
籠一杯のDVD達は、ジャンルごとに入れられてるわけではないので、
手に取った物のタイトルを探しながらになる。ここのバイトを始めたばかりの
彼女には結構時間がかかる仕事である。
(あと、ちょっと・・・・。)
美咲は、精一杯背伸びをして届きそうで届かないケースを取ろうと必死だった。
それを後ろから軽々と取られた。
振り向くと慎一が目的のケースを持って笑っていた。
「はい、どうぞ。でも、無理しないで、脚立もってくればいいだろうに。」
慎一がケースを美咲に手渡す。
「すみません。」
ちょっと照れたように受け取り、中身のDVDを入れ、
「また、お願いします。」
と慎一に渡す。
彼は、受け取ったDVDをなんなく棚に戻す。
美咲は、この光景に懐かしい光景が思い出される。



夏休み前の図書室で、美咲は、左手に厚手のハードカバーの本を片手に、
自分の背より高い所にある目的の本を、右手で背伸びして取ろうとしていた。
背表紙の下の方に右の中指がなんとか届いた時、目的の本が無くなった。
「・・・ったく、脚立持ってくれば早いだろうに・・・。」
振り向くと綾人が本を片手に小さく笑っていた。
「うん・・・。取れるかな〜と思って・・・・。」
「自分の身長を考えろよ。案外、真山って面倒くさがりだな。」
更に笑いながら綾人は美咲に本を手渡す。
「あ・・・ありがとう・・・。」
(そんな綺麗な顔で、笑わないでよ・・・。)
美咲は、礼を言い、目的の本を受け取りながら、綾人の笑顔に自分がしていた事が急に恥ずかしくなる。
頬もうっすらとピンクに染まる。
「如月君はいいよね。背が高いから、脚立を持ち運ぶ鬱陶しさなんか
経験しなくていいんだもん。あれって結構重いのよ・・・。それは兎も角、
それだけ背が高いと世界違うんだろうね。」
「まぁ、脚立を使う事なんて滅多にないな。・・・世界はどうかな・・・。」
綾人は顎に軽く握った手を置き、軽く首を横に曲げる。
「あっそうだ!これを元の場所に置いてもらってもいいかな?」
美咲は、厚手のハードカバー本を綾人に差し出す。
「いいよ。どこだよ?」
綾人は快く承諾し、本を受け取る。
「こっち、こっち。奥の本棚なの。」
美咲は綾人の前を手招きしながら歩き、目的の本棚まで連れて行く。
奥にある少々難しい本が置いてある滅多に人が来ない本棚の列にたどり着く。
「この棚の上の方・・・上から三段目なんだけど・・・。」
「おい・・、こんな重いもん仕舞うのに脚立使わない気だったのか・・・。」
綾人が呆れ顔で隣の美咲を見る。
「そ・そんな事は・・・・・ない・・よ・・・。」
美咲の答えが歯切れが悪い。目もどこか向いている。
(使わない気だったんだな・・・。取る時も使ってないなこれは・・・。
どうやって取ったんだか・・。)
綾人は心の中であきれる。そして、ある事を思いつく。
「真山、今手にもってる本をその辺に置けよ。」
「は?」
「いいから。」
「うん・・・・。」
訳も分からず、とりあえず美咲は綾人に言われるがまま、手にしている本を
近くの棚の空きに差し込む。
と同時に綾人に渡した厚い本が美咲に差し出される。思わず受け取る。
(なに?なに?私は届かないから頼んでるんだけど・・・。)
美咲の頭が混乱する。
綾人はそんな事を分かっているのか、美咲の後ろに回りこみ、しゃがみ込む。
「真山、俺の首に手を廻して。」
「うん。」
言われるがまま、彼の首に手を廻す。
「ちょっと失礼。」
綾人はそう言うと、美咲の両足を両腕で抱え込み、勢い良く立ち上がった。
「きゃっ!!」
いきなりの浮遊感に心の準備がされていなかった美咲は驚き、綾人の頭に
しがみ付いてしまった。
彼女はいま、綾人の左腕に腰掛ける格好になっている。
綾人は右腕で美咲の膝辺りを抱え込み落ちないようにしている。
「はい、これが、俺の世界。って言っても、今は真山の方がちょっと高いな。」
今は自分の頭上にいる美咲に微笑みかける。
微笑みかけられた方は、突然の事にパニックになっている。
「あの・・・あの・・・。」
「早く、仕舞えよ。」
「う・・・・うん・・・・。」
言われるがまま手に持っている厚手の本を目の前の棚に仕舞う。
いつもは、下から見上げる風景が目の前にある事が不思議でもあったが、
楽しくもあった。
思わず、美咲は目の前にある本達を両手でペタペタと触りまくる。
そして、窓へ視線を移す。
すると、いつもは対等な角度で見える隣の校舎や木々達を少し見下ろす形に
なっている。
普段は影になっていて見えない部分が見える。
「やっぱり、世界違うよ〜〜。違いすぎ・・・・。」
「そうか?」
「いいな〜〜。こんなにいい眺めを独り占めしてるなんて、ずるい・・・。」
「いつもこの高さだから、いい眺めかどうかは知らんぞ・・・。」
「じゃあ、今日から認識を改めてね。いい眺めよ。」
「そうする。」
いつもは綾人を見上げる美咲が彼を見下ろし、いつもは美咲を見下ろしている
綾人が彼女を見上げ、微笑み合う。
美咲は、しばらくそのままで違う世界を堪能させてもらった。



(あの時は、華奢そうな体で私を軽々と持ち上げた事が不思議だったけど、
あの職業だと納得よね。それに、あの筋肉だもの・・・。)
美咲は、高校の時に続き、あの夜の事を思い出し、頬が赤くなる。
「真山さん?どうしたの?」
なんだかボ〜〜〜っとし始めたかと思ったら、急に頬を赤らめた美咲を
心配して、慎一が声を掛ける。
その声に美咲は懐かしい思い出の世界から現実に戻ってくる。
「あ・・・ごめんなさい・・・。ちょっと高校の時を思い出しちゃって・・・。」
「頬が赤くなるような事なの?・・・もしかして彼氏の事?」
「えっ!?」
美咲の頬が益々赤くなる。
(えっ!?まじ!?)
冗談で言った事が真実であった事に慎一は驚きと共にショックを受け、
口を軽く開けたまま固まる。
「やだ・・。ぼ〜っとしてる場合じゃないですよね。仕事、仕事。」
美咲は、照れを隠す様に籠の中のDVDを取り出し、タイトルを探し始める。
目当てのDVDケースを見つけ、中身を入れ、籠の所に戻ってくると、
慎一が硬い表情で立っていた。
「あの・・・梶さん?」
恐る恐る声を掛ける。
その瞬間、慎一が美咲の両の手首を自分の両手で其々握りしめる。
「え?・・あの・・・・。」
突然の行動に美咲は戸惑う。振り払うのも気が引けるが、綾人以外の男性に
触られるのは、正直言って嬉しくない。
「梶さん・・あの・・・・」
「み〜〜〜〜さき!!って、おい!!」
美咲が離してくれる様に慎一に頼もうとした時、横からかすみの声がした。
DVDが入った籠を挟んで、手首を握られている状態の美咲を見て、かすみが
慎一を睨みつける。
「あっ!!ごめん!!」
慎一は慌てて美咲の手を離す。
かすみが、ズンズンという音が聞こえそうな勢いで二人に近づいてくる。
「美咲。あんたバイト上がる時間でしょう?帰ろう。」
怒った口調のかすみの言葉に、美咲は、自分の左腕の腕時計を見ると
上がる時間をとっくに過ぎていた。
「あっ、本当だ・・。でも、これが残ってるから済むまで待っててくれる?」
足元の籠を指差し、かすみにお願いする。
かすみが「いいよ」と言おうとした時、
「俺がやっとくから、上がりなよ。これから二人でデートなんだろ?」
と慎一が替わる事を提案する。
「でも・・・。」
「気にしないで。さっきのお詫び・・・。」
そう言って、慎一は後頭部を2・3度掻く。
「じゃあ、お願いします。かすみ此処でまってて!」
美咲はそういい残すと、奥にあるスタッフルームへ帰り支度をするべく走り去る。
残された二人に思い沈黙が漂う。
それを不機嫌なかすみが破る。
「ねぇ。梶さんって言いましたよね・・・。」
「ああ・・・・。」
慎一は、籠の中のDVDを取りながら答える。
「美咲にちょっかい出すの止めもらえませんか。あの子には心に決めた男性が
いますから。」
かすみは慎一に痛い程の厳しい視線を送りながら、冷たく言い放つ。
「そっか〜。やっぱり彼氏がいたのか・・・・。」
慎一はDVDを持ったまま腕組をする。
「でも、だからって、あきらめられないよ。」
そして、不適な笑みをかすみに送る。
かすみは軽くため息をつき、更に厳しい視線を慎一に送る。
「人の恋路をとやかく言うのは本意じゃないんだけど、あなたは、確実に美咲を
混乱させるからダメ!」
「どういうこと?」
「あなたの様な人は、言いたい事を言うからよ。黙ってみてるだけなら勝手に
片思いでも何でもしてればいいけど、あなたは確実に美咲を追い詰めるわ。」
「数回しか会った事がないのに、ひどい言われようだな・・・。どうして俺が
好きな真山さんを追い詰めちゃうのかな・・・。」
「それは!」
「かすみ・・・。」
慎一の事で頭が一杯だったかすみは後ろに来ていた美咲の気配に
気づかなかった。
慎一からは美咲が近づいてきた方向が見えるので、あとのセリフはわざと
言ったのだ。
(こいつ!!)
これに気が付いたかすみがきつく睨む。
慎一はその睨みを受けても平然としている。
「梶さん、今日の上がりは何時ですか?」
美咲が固い表情で慎一に聞く。こっちの表情には、慎一も怯む。
「あ・・え〜っと、8時・・・。」
「そうですか・・。その頃駅前の喫茶店で待ってますから。
きちんと話し合いましょう。・・・行こう、かすみ。」
美咲は、物凄い形相で慎一の事を睨みつけているかすみの手を引っ張り、
彼の前を走り去った。


PM8:00過ぎ。
駅前の喫茶店に、美咲とかすみと慎一の姿があった。
4人掛けのテーブルに美咲とかすみが並んで座り、美咲の向かいに慎一が座る。
かすみは、慎一が来た時に別の席へ移動しようとしたが、美咲に「居て欲しい」と言われ、慎一も同席を望んだので、この話し合いの席に一緒にいる。
慎一は、テーブルの上に握りこぶしを作った両手を乗せ、真摯な視線で前に座る美咲を見つめる。
「店で言った事は本気だよ。俺は真山さんの事が好きだ。彼氏が居ても
あきらめられない。」
「でも、私は、梶さんに振り向く事はありませんよ。それだけ、彼の事が好きなんです。」
「ちょっとでも考える事は無理?」
「はい。私の心は彼の物ですから。」
美咲は、両手を膝の上で組み、真っ直ぐな眼差しではっきりと告げる。
慎一は泥焼きのコーヒーカップを持ち上げ、気持ちを落ち着けるかの様に
ブレンドを一口啜る。
「うらやましいな、真山さんの彼氏は。こんなに想われて・・・。そんなにいい人?」
「はい。私にはもったいないくらい素敵な人です。」
美咲の固い表情が少し和らぎ、笑みが零れる。
これには、慎一も見知らぬ相手にやきもちを妬いてしまう。
そして、彼女にこの様な表情をさせる相手について知りたくなった。
「格好いい?」
「格好いいというより綺麗です。ねっ?かすみ?」
右隣に座るかすみに同意を求める。
かすみは勢い良く頭を2回縦に振る。
「綺麗!あれは男にしとくのもったいないね!!・・・何度高校のとき、
その辺の親父に写真を売りつけようかと思ったか・・・。」
かすみが握りこぶしを作り、悔しがる。しかし、彼女は、密かに綾人のファンで
ある女の子達に隠し撮りした写真を売っていた。なかなかの小遣い稼ぎに
なったと、誠と美咲も最近聞かされ、絶句し、綾人と再会してもこのことは
言うまいと二人は誓った・・・。後が怖いので・・・。
「はは・・・・。」
かすみの言葉に、慎一からあきれた様な乾いた笑いが出てしまう。
そんな慎一にはお構いなしで、綾人への想いが溢れる美咲は話を続ける。
「一番綺麗なのは、色違いの瞳。薄い空の青と草原の緑の瞳は、
幻想的で目が離せなくなっちゃうんです。その瞳で優しく微笑むと
それはそれは綺麗なんですよ。」
美咲は、軽く瞳を閉じ、綾人の優しい静かな微笑みを思い出す。
何度思い出しても、胸が締め付けられる。あんなに綺麗に笑う人は
錚々に居ないだろうと美咲は思う。
「オッドアイか・・・。彼は外国の血が入っているの?」
「はい。・・・あっ、ごめんなさい。彼の話ばかりで・・・。」
愛しい男性(ひと)の幻影の世界から戻ってきた美咲は、ちょっと照れたような
顔で謝る。
また、それが、慎一のやきもちを加速させる。
が、そんな素振りを見せず冷静に話しを続ける。
「ううん。ちゃんと聞きたいな。ライバルの事ちゃんと知りたいし、真山さんが
どれくらい彼の事を想ってるのかも知りたい。・・彼とは高校の時から?」
「いいえ。出会ったのは高校2年の時ですけど、事情があって今年の3月まで
音信不通だったんです。偶然再会して・・・、短い時間の間に色んな事があって、やっとお互いの心が通じ合ったと思ったら、彼は、『愛してる』っていう言葉と
この青いピアスを残して居なくなりました。」
「え!?」
口に持って行こうとした慎一のコーヒーカップが宙で止まる。
「美咲、何もそこまで・・・。」
隣のかすみが美咲の右腕を握る。
美咲は首を横に振ると、かすみに向かって小さく微笑み、
「いいのよ。本当の事を話さないと、本気の梶さんに失礼だもの。」
と自分の右腕に添えられたかすみの手に左手を添える。
かすみの手から自分の左手を離し、最初の時と同じ硬い表情で慎一を
見つめる。
彼女は、静かに話しだす。
「彼は、ある事件に巻き込まれて、何処に居るのか、生きているのか、
死んでいるのか分からないんです。」
「・・・・・。」
慎一は、黙って宙に浮いていたコーヒーカップをなるべく音を立てないように
ソーサーに戻す。
「私達、一緒に居た時間って本当に短いんです。でも、何かにつけて思い出す
のは彼の事なんです。体中で感じるのは彼の感触。耳の奥に聞こえるのは、
私の名前を囁く彼の声。私は、彼という甘い呪縛に縛られているんです。
すみません、私は彼以外の人とは一生付き合えません。」
美咲は、はっきり・きっぱりと自分の想いを告げると、目の前の慎一に深々と
頭を下げる。
「そっか・・・。」
慎一はそう言うと伝票を取り、席を立つ。
美咲は、まだ、頭を下げている。
「・・でも、真山さんは、結婚してるわけじゃないし、その彼氏も生存不明なら、
俺にもチャンスがあるわけだ。」
美咲は、ゆっくりと頭を上げ、慎一を見上げる。
隣のかすみは苦々しそうな顔つきになる。彼女は、こうなる事が分かっていた。
数度しか会った事はないが、彼が実はしたたかな男だという事は分かっていた。だから、既存の会社に収まりきれないのだという事も。
きっと、綾人が行方不明でなく、美咲の側にいてもこの男はちょっかいを
出したに違いない。
「というわけで、俺は、真山さんへのアタックを堂々と始めるから。じゃあね。」
そう言って、慎一は、伝票を持った手を上げて席をはなれ、さっさとレジへと
向かう。
「かすみ〜・・・・。」
美咲は、心底困った顔をして、隣のかすみに助けを求める。
かすみは、不機嫌そうにホット・オレを飲んでいる。
「あれは、あんたが自分の物にならない限りあきらめないわね・・。」
「え〜〜〜・・・。」
美咲の眉が思いっきり下がる。
「しっかりしなさい!私も、芝山も付いてんだから!!」
「うん・・・・。」
「ったく・・・、やっかいな男に目を付けられたものね・・・。」
かすみは、残りのホット・オレを胃に流し込み、荒っぽくカップをテーブルに置く。
「・・・ごめん・・・。」
美咲は身を小さくして友人に謝った。

その翌日の夜。
誠は、夜勤明けにも関わらず、かすみのマンションに呼び出された。
誠は、かすみの作ったおつまみ達を肴に、缶ビール片手に昨日の出来事を
聞いていた。
「は〜〜〜〜はっはっはっはっ!!真山も、すんごいのに惚れられたな!!」
夜勤明けの疲れた体のせいか、350mlの缶ビールを数本しか飲んでいない
のに、誠の酔いは早く顔は真っ赤に、話題が話題なのに上機嫌である。
「笑い事じゃないわよ・・・。」
美咲は、水割りにした梅酒の入ったグラスを両手で抱え込み、頬を膨らませる。
「ああ、わりぃわりぃ!!でも、そいつも如月に会った事がないから、
そんな余裕があるんだよ〜。あいつに会ったら,そんな事言えないって〜〜〜。」
「おっ、経験者の言葉は重いね〜〜〜〜。」
かすみは、誠に自分の缶ビールを傾ける。
こっちは、やけになって飲んでいたので相当酔っている。
ちょっと親父くさい・・・。
「ま〜〜な。あ〜はっはっはっはっはっ!!」
誠は、明るい性格そのままに、酔うと笑いが止まらない。
何もかもが可笑しくて、そのうち笑っている自分が可笑しくなってくる。
(だから、笑い事じゃないってば・・・・。)
美咲は、重い話題を軽く笑い飛ばしている酔っ払い二人に心の中で抗議する。
そんな美咲をよそに、二人は本来の目的を忘れて大笑いしている。
「でも、こんな時にあの色男は何処で何してんだかね〜〜〜〜〜〜。」
かすみが缶ビールをゴクゴクと軽快に喉に流し込む。
この言葉を聞いた誠から笑みが消え、そして、向かいで梅酒を呑んでいる
美咲を見つめる。
「なぁ、真山・・・。」
「な〜に・・・。」
美咲は、ちょっと怒っている。
「あのさっ・・・その〜、もし・・・もしも、再会した如月が事件の前と変わってたら
どうする?」
「変わる?」
「うん・・・、その〜〜〜雰囲気とか・・・存在そのものとか・・・・。」
「どうもしないわよ。綾人君である事には変わりないもの。」
美咲は、はちきれんばかりの笑顔を誠に向ける。
その笑顔と言葉で、誠も安心したように微笑む。
そして、やはり綾人に美咲が必要な事を痛感し、何とか会わせる事が
出来ないかと考え込む。
「芝山〜〜〜、だ〜いじょうぶだって!絆の深い二人だから、
どんなに離れてたって、必要な時に必要な形で出会うわよ。
私らはそれまで無駄な事考えず、サポートしてればいいのよ。」
まるで、誠の心を見透かした様な言葉がかすみから紡ぎだされる。
びっくり眼(まなこ)で自分を見る誠にかすみは軽くウィンクをする。
(やっぱ、こいつ、こわ〜〜〜〜〜。)
誠が心の中で冷や汗を流す。
訳の分からない美咲は、そんな二人をきょとんとした顔で見つめている。


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