『』=英語、「」=日本語
自宅療養にされて以来、綾人は自室に篭りっきりとなった。
運ばれてくる食事にもあまり手をつけない。
祖父母やアリエノールが小まめに部屋を訪れては、彼に話しかけていくが、誰の
何の話にも興味も関心も示さず、彼はただ黙って窓の外の風景を眺めていた。
生気のない瞳で・・・。
そんな日々が続いていたある日。
綾人は、いつものように窓辺の椅子に腰掛け、窓の外の風景をながめていた。
扉を軽くノックする音がした。
これもいつもの事で彼は答えない。
『入るよ?クリード?』
でも、ノックの主は違った。モーリス・オージェであった。
彼は、静かに綾人の部屋の中に入ってきた。しかし、綾人はこの恩師にでさえ、
無反応だった。
モーリスは、ポータブルDVDプレーヤー片手に綾人に近づいていく。
『クリードに見てもらいたい物があるんだけれど・・・。』
モーリスはそう言いながらプレーヤーの準備をする。
彼の両手の中でDVDの再生が始まった。
「ねぇ、おじい様ちゃんと撮れてる?」
プレーヤーから聞き覚えのある少女の声が聞こえ始める。
その声に綾人の瞳に生気が宿る。
再生は続く。
「大丈夫。ちゃんと撮れてるよ。」
祖父の隼人の呆れた様な声が聞こえてくる。
画面の樹里は、かしこまりどことなく緊張さえしていた。
「なんだか恥ずかしいね・・・。え〜〜〜っと、お元気ですか?綾人?・・・・何だか
こういうのも変ね・・・。」
樹里は、顎に手を置きム〜〜〜っと言いながら首を傾げ、紡ぎ出す言葉を考え
ている。遠くから祖母の小さな笑い声が聞こえてくる。この撮影会を彼女も見てい
たのであろう。
祖父の「早くしてくれ・・・。」というため息交じりの声も聞こえてくる。
そんな幸せの映像を流すプレーヤーを綾人はモーリスの手から自分の手へと移
動させる。
モーリスは、それを黙って見守っている。
悩む樹里に祖母が
「どうしてビデオレターを取っているかまず説明してはどう?」
と助言していた。
それに、「おお!!」と言って手を打つ樹里の姿に綾人の表情が和らぐ。口元に
薄っすらと笑みが浮んでさえいる。
「あのね!綾人ってば最近とっても忙しいじゃない?一週間、誰とも顔を合わさな
いって事ってザラでしょう?それはいけないと思うのよ!!でも、お仕事じゃしか
たないよね・・。でね、ビデオレターを撮ってお互いの近況を伝え合おうと思ったの
!我ながらグットアイディアだと思うのよね!!ねえ、おじい様!!」
「そうだね。」
自信満々に告げる孫娘に隼人はそう賛同するしかないといった感じの声で答え
ている。樹里は有無を言わせぬ迫力を持った女の子で、その迫力に綾人もやら
れていた。その事を思い出したのか、複雑な祖父の声に綾人は小さな笑い声を
上げていた。
「樹里もおじい様もおばあ様も元気よ!ママから電話もあったのよ!元気そうだっ
た!!今年のクリスマスは一緒に過ごせるんだって!!!嬉しいね〜〜〜。
ママに何をプレゼントしようか?ネックレス?指輪?ショール?・・・・だめね・・・。
ママの綺麗さにどれも霞むわ・・・。綺麗な母親ってこういう時に困るのよね〜〜
〜。まったく・・・・。」
樹里は、軽く口を尖らせ腕を組み自分の母親の美しさについて文句を並べてい
る。
なんとも贅沢な悩みだった。
画面の樹里の口からは、母親の美しさの文句から何時の間にか、雑誌に載って
いた母親を褒める記事になっており、自分の事の様に自慢していた。かと思えば
、学校での出来事を話し始めていた。
昨日こんな事があっただの、今日のレッスンはどうだったとか。
一見繋がっていそうで、実は繋がりのない話を樹里は矢継ぎ早に話していく。
時間が勿体と言わんばかりに。
それは、このビデオレターだけではなく、普段から彼女はそうだった。
久しぶりに会う綾人に、会わなかった時に起こった出来事を息つく暇もなく話して
いた。
それを綾人は楽しそうに微笑みながら聞いていた。
静と動。
同じ顔した双子は、正反対の性質を持っていた。それは、綾人が特機の隊員とな
ってから顕著となった。
いまも、片方は機械、片方は生身でありながらもそれは変わらなかった。
くるくると変わる表情と忙しく動く手と腕達。
それを黙って見ている綾人。
樹里が生きていたときとなんら変わる事のない穏やかな時間が流れていた。
微かとはいえ綾人に笑みが戻った事にモーリスは内心、安堵のため息をついた
。
完全に心を閉ざしてしまった綾人に、樹里が残したDVDを見せる事は危険な賭
けだった。
彼の心の拠り所であった樹里。
その生前の姿は、彼を慰めてくれるかもしれない。逆に、悲しみが増しニ度と心
を開いてくれないかもしれない。
だが、大人たちはその一枚しか残された道がなかった。
いまは遺品となってしまったDVDに祈りを込め、綾人が父の次に慕っていたモー
リスに託した。
そして、その賭けはいい方に転がっていた。
それは、大人たちの切なる願いもあっただろう。でも、一番の功労者は誰もが慰
められる樹里のひたむきな姿であろう。
その彼女が画面でもじもじとしている。
頬をうっすらと赤らめ俯きながら
「あ・・・あのね・・・・うんとね・・・。」
と繰り返している。指先もひっきりなしに絡め合わせている。
その樹里に綾人は、いつものように
「どうしたの?」
と穏やかな表情で聞いている。相手はDVDの中に存在する人物なのに、綾人に
とってはいつもの様に目の前で話しているようだ。
画面の中で樹里は、意を決したように顔をあげた。
「あのね!実は私、秘密で練習してた曲があるの。なかなかの出来になったと思
うのね。・・・クラシックじゃないのよ・・・・。先生は、変な癖が付くからクラシック以
外は歌っては駄目っていうけど、私は、好きな歌を好きなときに歌いたいの。・・・
好きな人の為にね。」
そう言ってはにかむ笑顔は綾人にそっくりだった。そして、亡き父親若葉にも。
「頑張った成果を綾人に聞いて欲しいの。・・・まだ下手よ?笑わないでね・・・。」
念を押した樹里は、姿勢を正し一呼吸ついた後に、滑るように歌いだした。
スピーカーからこの世のものとは思えない、可愛らしい天使の歌声が聞こえてき
た。
その曲に綾人は軽く驚いた。
樹里が歌い始めた唄は彼女が好きで堪らない、何度も綾人に弾けとせがむあの
曲・・・
「MY HEART WILL GO ON」
だった。
本格的なレッスンを受け、天性の才能も手伝い、簡易版のスピーカーから彼女の
品の良い歌声が響き渡る。この曲を持ち歌とする歌手とはまた別の魅力があっ
た。
大人顔負けの声質と音質。
「下手なんかじゃないよ・・・。」
そう一言賛辞を送った綾人は、目を閉じその歌声に耳を傾けた。
耳からだけではなく、体全体から彼女の歌声が聞こえてくる。
樹里は綾人のピアノの音が安心出来ると言っていた。それと同じように綾人は樹
里の歌声に癒されていた。
精神の深い部分で繋がっていた二人。
お互いを励ましあい、支えあってきた二人。
いつか自分達の父と母のような大切な者を見つけるまでは一緒にいるのだと
信じて疑わなかった半身。
そしてそれを永久に失った綾人を、樹里の歌声は優しく包込んでいた。
彼女は死した後も自分の半身を癒し、救っていた・・・・・。
樹里が歌い終わった後、少しの静寂があった。
綾人が静かに目を開ける。そのオッドアイに涙が溜まっていた。
画面には真剣な顔の樹里。
「・・・綾人。無理はしないでね。貴方はすぐ頑張っちゃうからそれが心配。
休む時はちゃんと休んでね。今度のお休みの時、綾人のピアノに合わせてこの
唄を歌うわ。もちろん、練習しておくからね。・・・・綾人、私はいつも貴方の味方だ
からね。愛してるよ・・・綾人。」
そう言って、樹里は10代の少女らしい愛らしい笑顔を浮べていた。
画面はしばらくその笑みを流し続けていた。
綾人の両目から後から後から涙が零れ出し、頬を伝い落ちていく。
「僕も愛しているよ・・樹里・・・。」
彼は画面の片隅を優しく撫でながらそう呟いていた。
彼が撫でる画面には日付と時刻が刻まれていた。それは、樹里が亡くなる前日
の夕方だった・・・。
映像が切れ、画面が黒くなっても綾人はその部分を撫で続けていた。
「樹里・・・樹里・・・・・。」
自分の手を、そしてプレーヤーを濡らす涙を気に止める事もなく、綾人は今は亡
き妹の名を愛情込めて呼び続けた。
この時、初めて綾人は樹里を想って泣いた。
愛しい妹を想い泣いた。
モーリスは泣く綾人をそのままに彼の部屋を後にした。
扉を閉める時、樹里の話し声が再び聞こえてきた・・・・。
その翌日。
綾人は庭にある桜の木の下に居た。12歳にしては背の高い彼でもこの巨木は
顔を上げ見上げねばならない。この木を初めて見たのは、父の葬儀の前日だった。
今は、一枚の葉もつけていない寂しい姿をしているが、あの時は、薄桃色をした
小さな綺麗な花達が誇らしげに咲いていた。
そして、樹里も隣に居た。
手を繋ぎ、顔を反らせるだけ反らし見上げた「父の桜」。
それを、今は彼一人で見ていた。
軽く目を閉じ、冷たい空気を胸いっぱいに吸った後、吐き出すと同時に彼は歌い
始めた。
昨日、妹が聞かせてくれたあの歌を。
妹が好きだったあの歌を。
樹里に比べれば、綾人の歌声はまだまだだったが、その辺の人間に比べればと
てつもなく上手かった。
樹里とは違った、重みのある歌声が如月邸を駆け抜ける。
その様子を祖父母は大広間の縁側から見守っていた。
綾人は歌う。
ありたっけの愛情を乗せて、天に届くようにと。妹に届くようにと。
7歳のあの日、父の為に二人で動揺を歌った時と同じように。
木枯らしが、綾人の体を吹き抜けていった・・・・。
悲しくもあり温かくもあった歌声が止む。
桜の木と一緒に見ていた青空から視線を自分の胸元にへと移す。そして、首元
に自分の手を突っ込むと何かを掴んだ。それを外に引き出す。
それは、黄金色の十字架だった。父の若葉が双子のはじめての誕生日の日に贈
ったオリジナルの24金製の十字架。
この世に2つしか存在しなかったが、その片割れは、樹里が天に還る時に一緒に
持っていった。
実質、この世に1つしかない貴重な十字架。
父親を無慈悲に奪われ、不必要な力が自分に備わっていたと知ってさえ、信じ続
けた神。
その象徴である十字架。
それを、綾人は力強く握りしめると、自分の体とは反対方向に引っ張り、引き千切
った。
耳元で、鎖が切れる鈍い音がした。
その十字架を彼は、地面に勢いよく叩き付けた。
「神様なんて信じない!樹里を、とうさんを取り上げた神様なんていらない!!
そんなもん必要ない!!」
綾人は天に向かい、神へ決別を宣言する。
「俺にとっては、あんたは、俺から大切な者を奪い去った略奪者だ。神なんかじゃ
ない!」
激しく睨む綾人に、天は何も答えない。
ただ、彼の左目と同じ色をした空が広がっているだけだった。
それからしばらくして、綾人は特機に復帰した。
しかし、それは今までの彼ではなかった。あの温かく無邪気な少年は姿を消し、
冷たく無表情な冷めた少年が新たに現れた。
今までのように自分から人に話す事はなくなった。子犬のようにはしゃぐ事も、走
り回る事も、むろん誰もを魅了したあの笑顔もなくなった。
今までの彼を彩っていた物は一切取り払われてしまっていた。
替わりに彼を彩ったものは、「冷たさ」だった。
綾人は、誰とでも、今まで親しかった人達とでさえ一線引いて付き合うようになっ
た。
物事を冷たいほどの冷静さで見るようになった。
笑わなくなった・・・。まるで、「物」である事に徹底しようとしているようにさえ見え
た。
綾人は、樹里と一緒に暖かな感情を失くしていた。
その彼が復帰一番にした事は、祖父母の家を出て一人暮らしをすることだった。
家族との生活は彼らを事件に巻き込む危険を孕んでいた。あの英に連なる家を
襲うものはいないだろうが、世の中に絶対は存在しない。何よりも、樹里との思い
出の濃い家に住むのは耐えられなかった。
綾人は、祖父名義の都心のセキュリティ万全がうたい文句のマンションの最上部
で一人住む事になる。
その次にした事は、警察庁に保管してある自分のデータを非公開とし、厳重なプ
ロテクターをかけることだ。ハッカーから自分の身内を割り出されないためだ。こ
のプログラムは彼自身が手がけ、未だに破られてはいない。
母親とは祖母を介して連絡を取ることにした。自分からは一切の接触をたった。
これが幼い綾人に出来る、残された家族を護る唯一の事だった。
こうして誰もが知る如月綾人が出来上がったのだ。
*****
病室は、美咲が来た時以上の重苦しい雰囲気に包まれていた。
春麗から綾人の過去を聞いていた美咲は何も言わずに黙って、苦しい表情をし
ながらも話し続ける春麗を見つめていた。
綾人の過去は、話し始める前に春麗が言ったとおり、重かった。重すぎた。
話を聞いていて、本当に起こった事なのか疑いたくなる時もあった。それほど、自
分の持つ現実からかけ離れていた。
しかし、間違う事無く綾人が歩んできた・・・歩まされた人生だった。
春麗の話しは続く。
「それからのあの子は本当に変わったわ。何時の間にかお酒も煙草も覚えたし、
非番の日は何処にいるのか誰も分からなかった。仕事に支障をきたす事はなか
ったから誰も責めはしなかったのだけれど・・・・。見ているのは辛かったわ・・・・。
あの子の行為は、自分で自分の寿命を縮める事だったんだもの・・・。」
「・・・・・・。」
「あの子の中には常に二人の自分が存在した。一人は、身勝手な大人たちによ
って作らされた戦闘兵器の「如月綾人」。彼は罪を償うために必死で色んな事件
で戦った。でもその一方で本当の彼「アヤト・クリード・メイフィールド・キサラギ」は
、失くした半身を想い、自分のせいでこれ以上傷つく人を増やす事を良しとせず、
自分の死を願っていた。この子は、そんな自分の狭間で苦しみ傷つき生きてきた
の。」
春麗は視線を美咲からベットに横たわる綾人へと移す。彼は、自分の事を話され
ていることなど微塵も知らずに、昏々と眠り続けている。
「自分から死ぬ事も出来ず、誰かが殺してくれるわけでもなく、でも、確実に自分
に巻き込まれ傷つく人がいる。積もり積もったその事がこの子の精神に限界を
もたらした。・・・死ぬ事も殺される事も叶わぬならば、自分を閉じこめよう・・・・。
そう思ったんだと思うの。この子は、根が優しいから自分が消え去る事で全てが
解決すると思ったのね。愚かしいくらい、純粋なの・・・・。」
綾人を本当の弟のように愛しそうに見つめる春麗に、美咲は、深い愛情を見た。
それが彼女の胸を締め付ける。
無償の愛とは、今の春麗の事をいうのだと思った。
美咲は、春麗から綾人に視線を移す。
ただ、眠り続けているだけの姿でも彼は綺麗だった。そんな彼にあんな辛い過去
があったとは思わなかった。何かしら、心に傷を負っていそうだとは思っていた。
一線を引いたような態度からそれは気がついていたが、まさかこれほどとは・・・・
。
離れた場所に座る京は、ただ無言でまっすぐに綾人を見詰める美咲を見ていた。
彼女が春麗から聞かされた綾人の過去を彼女なりに考えている事は、その素振
りから分かる。しかし、それが綾人にも自分達にとってもいい事かどうかは分から
ない。
もしかしたら、事の重さに綾人への愛情が薄れてしまう可能性とてあった。
京は、そうならないことを願うだけだった。
今は亡き小さな天使に・・・・。
その時だった。
美咲が何も言わずに席を立った。
このことに、春麗も京も美咲が綾人から離れることを決めたのだと思い、
人生で何度目かの落胆を見せていた。
しかし、それは二人の早とちりだった。
美咲は、小さく微笑むと眠る綾人の頭を細い両腕で優しく包み込んだ。
そして、いつも彼がしていた行為を今度は自分からする。
自分の額を綾人の額にそっと合わせる。
「よく頑張ったね。でも、もう一人で頑張る事は無いんだよ?その荷物、私にも分
けて?ね?綾人君。」
紡ぎ出された暖かな言葉に春麗と京は思わず泣き出していた。
信じられない程の重い過去を背負い、罪を背負っている綾人を美咲は無条件で
受け入れてくれた。その事に二人は安堵し、感謝した。
ここ数年、ずっと張りつめていた物が美咲によって静かに緩められた気がした。
「ありがとう・・・ありがとう、美咲さん。」
春麗は、止めようとしても止まらない涙を何回も手で拭いながら礼を言い、
京は、座ったままで深々と頭を下げた。
そんな二人に慌てた美咲は綾人から体を離し、とりあえず近くの春麗の涙を自分
のハンカチで拭き始めた。
「あの・・・私、お礼を言われる事は・・・。牧瀬さんも頭を上げてください・・・。」
京は下げたままの頭を左右に振り、春麗は美咲の手にそっと触れた。
「この子を・・・綾人を受け入れてくれた、その事だけで、私達は貴方にはお礼を
言っても言い尽くせないほど感謝してる。綾人を受け入れる事は並大抵ではでき
ないもの・・・。」
「そんな・・・・そんな事ありませんよ・・・春麗さん。」
ちょっと困惑したままの顔で笑う美咲は、涙目で自分を見つめる春麗から視線を
綾人へと戻す。
「だって、私は綾人君が好きで好きで堪らないだけ。もうニ度と彼の側を離れるの
が嫌なだけなわがままな人間なだけです。お礼を言われるほど立派な人間では
ありません。」
「それが凄いのよ。」
「そんなことないですってば・・・。私にとって綾人君は綾人君以外には成り得ない
んです。どんな過去であれ、それは今の・・・私が恋した彼を形成するもの。全部
が愛しい綾人君なだけです。」
美咲は、皆が重いという綾人の過去を何でもないと言い放った。
そして、それも含めて全て愛しいと。
京と春麗に心地よい軽い衝撃が走り、また、目の前の小柄な女性に頭が下がる
思いがした。
その彼女は、綾人の髪の毛を優しく撫でていた。眠る綾人を見つめる瞳は彼へ
の愛に溢れていた。
今の美咲こそ、無償の愛そのものだった。
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